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明代旧拓本『絳帖』全十二冊揃 木夾板装 原書箱入 『絳帖』は、中国歴代を代表する著名な法帖の一つであり、『淳化閣帖』『大観帖』と並び称される帖学の重要資料です。本品は明代の旧拓本で、明代の尚宝司少卿にして著名な相術家であった袁忠徹の旧蔵品と伝わるもので、全十二冊が完存し、さらに大型の原書箱も残されています。伝来が明確であり、極めて貴重な資料です。 全十二冊はすべて木夾板による装幀が施されており、古雅で格調高く、明清時代の文人蔵書の趣を色濃く残しています。長い年月を経ているため、各冊とも綴じ部分に剥離や断裂が見られ、紙面にも風化や経年劣化が認められますが、本文部分の保存状態は概ね良好で、大きな欠損は確認されません。 実物を見ると、紙質・墨色ともに古色が自然に備わり、拓墨は深く落ち着いた趣を有しています。字口も鮮明で力強く、明代拓本特有の風格をよく伝えています。数百年にわたる伝世のため相応の摩耗は見られるものの、全体としては良好な保存状態を維持しており、稀少性の高い一組といえます。原書箱も内部の仕切り構造を含めて残されており、資料的価値をさらに高めています。 特に注目すべき点として、本帖には歴代の蔵書印が多数捺されており、その伝来の一端をうかがうことができます。確認できる印章には、 * 「尚宝少卿袁氏忠徹印」 * 「袁氏珍玩子孫保之」 * 「会元状元」 * 「東京赤羽萬閣森汕氏」 * 「経筵講官太子少師建極殿大学士図章」 などがあります。 これらの印章はいずれも文献学・書誌学上の重要な研究資料であり、本帖が歴代の著名な収蔵家の手を経て伝来したことを示しています。とりわけ「経筵講官太子少師建極殿大学士図章」のような高位官職の印章は極めて興味深く、旧蔵者の考証や伝来史研究において重要な手掛かりとなります。 『絳帖』は晋・唐以来の名家の墨跡を集刻した法帖であり、特に王羲之・王献之の書跡を多く収めることで知られています。古来より書家が臨書の手本として重んじてきた名帖であり、本品は法帖としての価値のみならず、版本学的価値、収蔵価値、学術研究価値を兼ね備えた、中国書法史・金石学・帖学研究上の重要資料です。 ———————— 袁忠徹(えん ちゅうてつ)について 袁忠徹(1385~1463)は、中国明代を代表する著名な相術家です。浙江省寧波府県(現在の浙江省寧波市)の出身で、字は静思(せいし)といいました。 父の袁(えんこう、号は柳庄)は明初随一の相術家として知られ、袁忠徹はその家学を継承して名声を高めました。永楽帝(明成祖)、洪熙帝、宣徳帝、正統帝ら歴代皇帝の時代に活躍し、宮廷や士大夫の間でも高い評価を受けました。 また、朝廷に仕えて**尚宝司少卿(しょうほうししょうけい)**を務めています。尚宝司は皇帝の宝璽や印章などを管理する官署であり、少卿はその副長官にあたる重要な官職でした。 著書には『古今識鑑』などがあり、中国相術史において大きな影響を与えた人物として知られています。 本品には「尚宝少卿袁氏忠徹印」「袁氏珍玩子孫保之」の蔵書印が認められ、袁忠徹旧蔵本である可能性を示す重要な資料となっています。これらの印章は、本帖の伝来および収蔵史を考察するうえで極めて貴重な手掛かりといえます。 >