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本書、坂口安吾の『爐邊夜話集(ろべやわしゅう)』初版は、昭和16年(1941年)4月20日に、宇野千代が主宰するスタイル社出版部(発売:四季社)から刊行された、安吾にとって初の創作集(短編集)です。 本書には、安吾が初期に執筆した古典翻案や歴史・寓話的な短編小説が計5編収録されています。
『閑山(かんざん)』:禅僧の奇妙な生活や精神世界をユーモラスかつシニカルに描いた名作。
『勉強記』:人間の業や、独自の「勉強(思考・模索)」に対する安吾の視点が盛り込まれた作品。
『イノチガケ』:ひたむきに生きる人間の姿を、安吾らしい独特のテンポで綴った短編。
『盗まれた手紙の話』:エドガー・アラン・ポーの同名小説にインスパイアされつつ、安吾流の解釈を施したミステリ風の作品。
『紫大納言(むらさきだいなごん)』:平安時代の王朝絵巻を舞台に、人間の美意識や虚栄、エゴイズムを妖艶に描いた傑作歴史寓話。
『後記』:安吾によるあとがき。「炉辺でなつかしい物語を聴くような気持ちで読んでほしい」という、本書のタイトルの由来や文学観が語られています。
本書は、日本の近代文学において極めて高い資料的・歴史的価値を持っています。 ・安吾初の単行本(創作集):それまで雑誌発表のみだった安吾の作品が、初めて1冊の本にまとまった記念碑的な処女出版物です。・ 承認部数わずか「700部」:戦時下の用紙統制により、当時の承認部数はたったの700部でした。現存数が非常に少なく、市場に出回ることが稀なため、コレクターの間では垂涎の的となっています。・ 宇野千代との関わり:当時、安吾と親交の深かった作家・宇野千代が発行人を務める「スタイル社」から出ている点も、文学史的なロマンを感じさせるポイントです。
出品の書物は、ご覧のとおり、表紙ヨゴレ、背ヤケ、イタミ、本文シミなど多少あるものの、旧蔵印、書込み、シール跡など一切なく、戦禍を生き延びた、この時代の書物にしては、保存に恵まれた良いコンディションの一冊かと思います。 >