地域特産農産物としてさといもを50アールの畑で栽培しています。今シーズンも豊作で立派な芋に育ちました。
富山県南砺市の旧井波町山野地区は、古くからさといもが栽培されています。漫画「美味しんぼ」で取り上げられたさといもの産地です。
山野産さといもは脱脂米糠などの有機肥料を多用して栽培され、煮崩れしないのに柔らかく粘りがあり、もっちりと甘いのが特徴です。
品種は土垂系の大和で、1個100g以上の大きいサイズ5kg箱詰め土付手選別厳選品です。
大きくて美味しいと好評で、多くのお客様にリピートいただいています。
「池波正太郎の銀座日記(全)」で賞賛された井波のさといもの生産者が栽培管理をしています。
さといもQ&A (中学2年生の校外体験授業の質問に加筆)
・なぜ山野でさといもを栽培しているのか。
山野地区は庄川扇状地に位置し水が豊富で、排水も良好な土壌はさといも栽培に適しているからです。
・山野ではいつごろから栽培しているのか。
江戸時代には、加賀藩から琉球の種芋が下賜された記録があります。特産品としての歴史は古く、江戸時代にはすでにブランド化されていました。
・さといもを作るときに気をつけていることやこだわっていること。
前年と同じ畑でさといもを栽培すると連作障害が出ます。ミナミネグサレセンチュウという線虫が繁殖し根腐れを起こすのが原因と考えられています。
3~5年間稲作をし、線虫がいなくなった後で水田転作としてさといもを栽培しています。
水田の土は酸性化しませんので、畑地作物を栽培するのに適しています。長年さといもを栽培したことの無い水田で栽培するとおいしく形の整った芋が採れます。
・おいしいさといもをつくる工夫。
土壌改良資材で土作りをし、脱脂米糠などの有機物肥料を多く使っています。さといもの成長には大量の水を必要するため、夏期は水管理に気をつけています。
・他の地域のさといもと比べてどのような違いがあるのか。
山野のさといもは他産地と比較して煮崩れしないのに柔らかく粘りが有り、もっちりと甘いのが特長です。他産地のさといもより包丁の入りが良く、切り口はやや灰色(さといも色)かかっています。
・さといもがねばねばしているのはなぜか。
さといものねばねばしたぬめり成分は、ガラクトースという糖が重合した水溶性食物繊維ガラクタンです。
免疫力を上げたり、腸の中の善玉菌を増やして便通を良くしたりする効果があります。
同じぬめり成分のグルコマンナンも水溶性食物繊維で、便通を整えて便秘を防ぐ効果や、糖尿病や高血圧などの生活習慣病の予防に効果があります。
・さといもにはどのような品種があるのか。
山野で青果用、種芋用に栽培されているのは食味の良い大和で、葉が生長すると地表に垂れる土垂(どたれ)系の品種です。
ズイキ(茎)を食用とする赤芋も栽培しています。
・どのような肥料を使っているのか。
植物の肥料三要素(窒素、リン酸、カリウム)をバランス良く配合した動植物有機物を配合した化成肥料と大量の脱脂米糠を使っています。
今年度は地元クラフトビールの麦汁絞りかす堆肥を一部試用しました。
有機物が多いので有用微生物が増殖し、ミミズが大量に生育して土を肥やしてくれます。青果用にはリン酸、カリウムの割合を増やしています。
肥料の効きを調節するため多孔性鉱物ゼオライトを主成分とする土壌改良資材を使っています。
・害虫はどのように駆除しているのか。
葉を食い尽くすいも虫(セスジスズメ蛾の幼虫)は毎朝畑を巡回し手作業で駆除します。早朝はツバメ、昼間はスズメの大群が手伝ってくれます。
梅雨前線・台風・熱帯低気圧に載って東南アジアから飛来するハスモンヨトウは、フェロモントラップでオス蛾を捕獲し、幼虫発生時期を予測して駆除計画を立てています。
大量発生した場合は、有機農業資材に認定されていて、使用回数の制限の無い枯草菌製剤(BT剤)ゼンターリを散布しています。枯草菌は納豆菌の仲間で人畜無害です。
アブラムシが発生した場合には、特異的に吸汁を阻害して餓死させるウララDFを使います。環境に悪影響を及ぼす恐れのある有機リン・ネオニコチノイド系の薬剤は使用していません。
9月上旬以降の害虫発生は、葉の食害が子芋を太らせ始めるスイッチとなるため駆除しません。
地上部が枯れても親芋に蓄えられた養分で子芋、孫芋は大きく育ち、親芋は痩せていきます。さといもファミリーです。人間界と似ていますね。
・除草はどのようにするのか。
植うね全面を黒い生分解性マルチフィルムで覆って雑草が生えるのを防いでいます。
生分解性マルチは収穫時までに微生物によって水と炭酸ガスに完全に分解され、マイクロプラスチックを生じません。
除草剤は成育初期に最小限使用し、除草剤の効果が切れる7月下旬に培土機で雑草を土にすき込みます。
8月になってさといもの葉が茂り、ジャングルになると日射が地表に届かず、雑草は生えてきません。
・病気にどのように対処するのか。
葉が枯れる疫病の予防と治療には、シメジの一種の食用きのこから発見された天然生理活性物質(ストロビルリン類)に由来する殺菌剤アミスター20フロアブルを使用しています。
台風、雹などで葉が痛んだ場合は、銅イオンの殺菌効果を利用するZボルドー水和剤を使います。有機農産物栽培に使用が認可されていて、有効成分の硫酸銅は乳児用ミルクに添加されています。
・どのくらい収穫できるのか。
1株当たり約1.5kg(10~20個)の芋が採れます。10アールあたり約1,700株植えられていますので収穫は約2,500kg/10アールです。
回転ブラシで土を落とし、ころころと丸い孫芋を手選別して青果用として出荷しています。
食べ方について
・さといもの美味しい食べ方
にっころがし、ふくめ煮、煮物(醤油味、味噌味)、芋田楽、きぬかつぎ、いとこ煮、味噌汁、芋煮会鍋の具、イカとさといもの煮物、豚肉とさといもの煮物など
・さといもの一番美味しい時期
さといもは秋の季節野菜。9月下旬から11月下旬が旬で、1月下旬までが美味しい時期です。南方植物で寒さに弱いので台所などの人間の居住環境での保存がお薦めです。
皮をむいて冷凍庫で保存しますと1年間は美味しく召し上がれます。
(文責M.M)